アダルトゲームの歴史 1996年 その3

アダルトゲームの歴史 1996年 その3

アダルトゲームの歴史を振り返るシリーズの第36弾ということで、
1996年の3回目になります。

今回は難度の高いゲームやデザインに凝った物等、
従来から続く路線の作品についてです。

96年には大きく分けて2つの流れがありました。1つは前回書いたゲーム性の易化の流れです。易化の流れ自体は以前からもあったのですが、それがかなり極端になってきたりヒット作が出ることによって、誰の目にも見えやすい形でよりはっきり表れてきたのが96年だったのです。

もっともそれは、誰でも分かりうるという1つの勢力として一般的に認識されるようになったということにすぎません。全体として見た場合には、依然として高難度の作品や様々な要素も含んだ作品も多かったです。
名作や大作として語られやすい作品はほとんどが後者に属しており、主流という点ではまだ後者に属する作品が主流と言えるのでしょう。
ということで、今回はこれまで通りの流れの作品、即ち高難度路線やゲーム性とストーリーの融合を図った路線の話に入ります。

選択肢により様々なストーリーに枝分かれするタイプのノベルゲーは、96年にも『GLO・RI・A ~禁断の血族~』や『暗闇』などがあります。これらは、良く言えば成熟された時期でもあったのですが、基本的にプラスアルファとなる新しい方向性は生み出せなかった印象です。
複数の選択肢が絡み合い、難易度が更に上昇することで高難度を求めたユーザーを満足させた一方で、『GLO・RI・A ~禁断の血族~』あたりになってくると、さすがにここまでくるとついていけないというユーザーの声も出始めた感じですね。

前年に発売された『同級生2』の大ヒットがあった時間概念を伴う移動式ADVは、『下級生』や『卒業写真2』がありました。傾向としては『同級生2』が冬だけだったのに対し、『下級生』では1年間となり期間が伸びたことが挙げられます。プレイ期間が長くなる事で広い意味では大型化したとなるのでしょう。
もっとも『下級生』は『同級生』シリーズにあった画面クリックの要素がなくなっており、その点で不評を招いたりゲーム性が簡略化されたのも事実です。
そういう意味では易化の方向も少しは有していたと言え、正確には狭間にあった作品と言えるのでしょう。
この『下級生』に画面クリックも併用させたら難易度が上がりすぎて収拾がつかなくなっていたでしょうから、個人的には難易度のバランス的にもなくして正解だったようにも思います。もっとも私見はともかくとして、画面クリックが欲しかったという声は大きく、難易度が上がってでもそれを求めていた層がまだそれだけいたということでもあるのです。
ここはね、後のシナリオ重視ユーザーとか何でもノベルにすべきと考える人は安易に看過してしまうところですけどね。何で発売当時に古参のユーザーから『下級生』が叩かれたのか。その最たる要因にエルフ得意の画面クリックというADVとしての要素が削られたことが挙げられるのです。
エルフ自身が作品の大型複雑化と簡素化の狭間でジレンマに陥っている状況が、この『下級生』からよく伝わってきます。新しいユーザーを含め多くのユーザーには支持された『下級生』ですが、古参のファンからは不満もでてしまった。96年にシナリオ重視への変化を説く見解もありますが、多数派と呼べる多くの人たちはまだ高いゲーム性も求めていたということなのです。
『下級生』や『卒業写真2』はこの年の代表作として語られることも多く(96年で最も売れたのは下級生です)、それだけ満足した人も多かったのでしょうが、同時にプレイ期間のわりにイベントが十分とは言えず、このようなジャンルが広く認知されるにつれ、同時にシステムの限界をも広く示してしまいました。
特に『卒業写真2』はストーリーだけなら『同級生2』以上との声も多数あったものの、途中で街から人が消えるだの難しいだのというゲーム的な部分での作り込みが足をひっぱって評判を落とした面が強かったです(因みに、WIN版ではヒロインの一部が攻略不能になるという致命的欠陥も有しており、WIN版から入った人には印象が良くなかったのも後に語られにくかった一因なのでしょう)。

恋愛ADVがあって恋愛SLGがあるなら、恋愛RPGがあっても良いだろと思ったのか、96年に誕生したのが恋愛RPGでした。この場合の恋愛RPGとは「恋愛を演じるゲーム」ではありません。また少しややこしいですが、恋愛を扱ったRPGとも異なります。恋愛を扱ったという意味であれば、98末期のRPGなんて何かしらの恋愛は扱っていますし、96年以前から普通にありましたしね。ここで言う恋愛RPGというのは、「恋愛SLGのように複数いるヒロインの中から1人を選ぶことを目的としたRPG」のことを指します。
ここは何とも不思議な部分でもあるのですが、恋愛SLG時に恋愛をシミュレートするゲームだとか言い出すように、恋愛RPGだから恋愛を演じるゲームだと勘違いして言い出す人はいなかったんですよね。ブームになるといろんな人が出てきて、言葉の生まれた経緯を無視して字面から勝手に解釈を始める人が増えます。この当時の恋愛SLGであるとか、後のツンデレなんかも当初と意味を変えて各々好き勝手に解釈していますしね。しかしあまりにマイナーだと最初から分かっている人しかプレイしないので、恋愛RPGが何たるものなのか、言葉の用いられた経緯を知っている人が多かったからかもしれません。
家庭用ゲーム機では『ブルーブレイカー』がPC-FXから発売されましたが、PC-98では『ハーレムブレイド』が代表作となるのでしょう。
この『ハーレムブレイド』は、ユーザー側の意識の変化により次第に語られなくなった典型例でもあると思います。というのも、『ハーレムブレイド』はアダルトゲーム初の主題歌入りOPでも話題になりましたが、それ以上にとにかく難易度が高かったのです。
基本はフリーシナリオタイプのRPGなのですが、攻略可能キャラは15人、サブも含めれば20人になります。自由度重視のフリーシナリオタイプということで時間の概念も取り入れられているのですが、各キャラを攻略する際のフラグがとても厳しかったのです。
当時のどんな難しいゲームもクリアしてきた猛者たちをもってしても、全キャラを自力でクリアすることは無理と言われるくらいでしたからね。全部のキャラのEDを見ようとするとかなりのボリュームになりますし、難易度も異常に高いし、グラフィック等も良いということで、高難度の大作路線を求める人には最高のゲームであり、一部では最高のゲームと言う人もいたのです。ADVがYU-NOでSLGが鬼畜王ならRPGはハーレムブレードという感じで並び賞され、当時としてはかなり話題性の高かった作品なんですね。
でもこういう作品は、高難度の作品を好まない人には好かれません。
また、一回のプレイで時間をかなり使うRPGと多数のヒロインを攻略する構造はあまり相性が良くないのです。どうしても途中で同じ作業の繰り返しに感じて飽きてきますからね。そもそもヒロインを攻略することとRPGであることを両立させる必要性があまり感じられないので、ストーリーとシステムの融合性を重視する層からもあまり好かれないのです。恋愛RPGは96年と97年に幾つか見かけられましたが、あまり普及しなかったのはそういう理由からなのでしょう。
高難度かつ大作を求める層には最高のゲーム足りえたのだけれど、アダルトゲーム業界はゲーム性をなくす方向に進んでいきますし、そうなるとこういうゲームを好む層はアダルトゲームから離れていきます。後に残るのは、こういうゲームを好まない層ばかりですから、次第に語られなくなっていくわけですね。

次に調教SLGですが、90年代に勢いのあったこのジャンルは、比較という面では非常に分かりやすいです。前回『殻の中の小鳥』の名前を挙げましたが、カードバトルを用いたとっつきやすい調教システムであり、メイドブームの火付け役にもなったということで、どちらかというとキャラの属性に興味があるけどハードなゲーム性は好まないライト層に好まれた作品でした。
それはそれで一つの方向性として素晴らしい内容だったのですが、いわゆるハードな調教SLGファンが好むような作品としては、調教SLGの三大聖典の一つとも言われる『虜』の名が挙げられるのでしょう。
『虜』は96年の1回目でも扱ったように、最初期のWIN用ゲームとしてグラフィックも音声面も素晴らしかったのですが、鞭で任意の場所を叩くとその痕が残るようなリアリティさも有していました。鞭で直接叩けるADV的要素の導入だけでなく、シナリオもしっかり描かれていましたし、グラフィック・サウンドといった個々の要素の出来やそれら要素間の融合性などあらゆる面で完成度の高い仕上がりになっていました。もちろん難易度も高かったです。
PC-98時代末期のゲームの良さを継承しつつも、それをwindowsという最新の環境で新しく進化させることに成功した最初の例と言えるでしょう。三大聖典の他の二つが新鮮さの面で目立っていたのに対し、虜はシステム以外では新鮮さはあるものの、どちらかというと全体的な完成度も重視された作品だという点で、やや異なるように思います。

さて、96年と言うとどうしても外せないゲームが2本ありますが、その一つが西の横綱であるアリスから発売された『鬼畜王ランス』でした。ランスシリーズという観点から見た場合、『鬼畜王ランス』は番外編になります。このままのペースでは本編が完結しないおそれもあることから、先に設定を全部出してしまおうということで作られた作品でした。
『鬼畜王ランス』は一般的には戦略SLGとなるのでしょうが、もう少し細かく書けば戦略SLG+ADVとなるのでしょう。そしてこの作品の良さという観点からは、むしろ「+ADV」という部分にこそ意味があるように思います。
『鬼畜王ランス』を戦略SLGとして捉えてクリアだけを念頭に置いた場合、それほど難易度は高くありません。しかし、非常に多く用意されたキャラのイベントを進行させフラグを立てようとすると、途端に難しくなります。あるキャラのフラグを進行させると、別のキャラのフラグが立たなくなることもあるので、複数回のプレイも必須となります。一方のフラグが他方に影響を及ぼす機能はマルチフラグとなるわけですが、似たものとしては『同級生』が挙げられるのでしょう。『同級生』はマルチフラグを用いつつ他にも様々なADVの要素を混ぜ込んだ作品でしたが、『鬼畜王ランス』はそれをSLGでやったというわけですね。
このような路線はアリスでは後の「大シリーズ」に受け継がれますし、他社でも『LOVE SEED』のような例はあるのですが、どうしても数は少なくなっているようです。

もう一つが、エルフから発売された『この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO』でした。『YU-NO』はシーズウェアからエルフに移籍した菅野ひろゆき氏が制作したゲームなのですが、全体としてはエルフの集大成としての意味も兼ねていた作品のように思います。
まず基本システムはポイント&クリック(P&C)式のADVとなります。エルフは『ELLE』(1991)以降、何作かP&C式のADVを制作しています。他方で菅野氏がシーズウェアで制作したゲームはコマンド選択式ADVばかりであり、P&C式ADVの経験がありません。P&C式ADVは海外のADVの主流のシステムでもあり、非常に面白いゲームが作れる一方で、ちょっとしたことでつまらなくもなります。基本システムであるP&C式で問題が生じることなく上手く作れたのは、おそらく菅野氏というよりエルフの功績が大きいのではないかと考えます。
エルフはその後はP&C式ADVを作りませんし、他社にしてもノベルやそれに似た構造のゲームが増え、P&C式ADVはほとんどなくなってしまいます。なので結果的にではあるものの、エルフ及び国産アダルトゲームにおけるP&C式ADVの集大成的存在になったように思います。
またグラフィックでもエルフは定評がありましたが、そのエルフの塗りが『YU-NO』でも存分に発揮されています。98時代最後の作品でもありますから、16色の塗りでどこまでできるかという観点からも大事な作品となるのでしょう。
加えて、サウンドはPC-98では主にFM音源が用いられていたのですが、そのFM音源の扱いに関して非常に高い評価を受けていたのが梅本竜氏で、シーズウェアの『EVE バーストエラー』なども手がけています。その梅本氏が『YU-NO』のサウンドも手がけており、その点でも集大成的作品だったのかなと。
これらのゲームとしての基礎的な部分に加わったのが、菅野氏によるストーリーであり、ADMSというシステムでした。
ADMSはRPGでダンジョン探索をする光景をADV的に表現するべく作られたシステムで、そこから生まれる高いゲーム性も評価されたものの、単なるゲーム性やマップ表示による利便性以上に、そのシステムとストーリーとの融合が一番評価されていました。
SFモノとしてのストーリーに密接不可分なゲームシステムの存在、その融合性の高さこそが、小説や映画でも表現できないゲームとしての物語表現を可能にしたのであり最大のポイントだったのです。
もちろんこれまでにも、名作と呼ばれる作品の多くに、ゲームシステムとシナリオの融合性は見られました。『YU-NO』もまたその路線上にあると同時に、その融合性が特に目立った作品と言えるのでしょう。
『YU-NO』はPC-98時代の末期に発売されたこともありますが、98ゲーで評価されるポイントの多くを兼ね備えていました。つまり高い難易度とゲーム性、或いはゲームとシナリオの融合性はもちろんのこと、決してそれだけではないということです。ストーリーに惹かれた人、NTRのように個別の要素に惹かれた人、グラフィックに惹かれた人、システムに惹かれた人・・・という感じで様々な点を評価する人が集まってトータルで高い支持を得たことが大きいのです。そういう多角的な評価のされ方も98ゲーがなくなると共に減っていき、その後はシナリオ重視という名の他要素排除の歴史へと進んでいきます。そのような後の変化の是非はともかくとして、そういう価値観の変遷の観点からも、『YU-NO』は一つの節目だったのかもしれませんね。

関連するタグ 


捻くれモノの学園青春物語   イブニクル2    きゃんきゃんバニープルミエール3
カテゴリ「エロゲの歴史」内の前後の記事





管理者にだけ表示を許可する

トラックバック http://advgamer.blog.fc2.com/tb.php/1240-b5bb4e83
| ホームへ戻る |