青猫の街 涼元悠一

青猫の街 涼元悠一

『青猫の街』(涼元悠一)

元keyのライターだった涼元悠一さんが、
98年に第10回ファンタジーノベル大賞で優秀賞を受賞した作品です。

青猫の街

説明は以下の通り。
「神野の友人Aが旧式のパソコン1台残して消えた。
神野はパソコン通信、インターネット、地下BBSを駆使してAを探索する。
数々の暗号を解読し、幾たびかの危機を乗り越えてたどり着いた先は
謎の地下組織「青猫」だった…。
インターネットという悪意の暗闇を描くサイバーノベル。
第10回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。」

PCもネットも今のようにありふれたものでなかった時代。
windowsになる前のPCに触れたことのある人ならば、
この本を読めばきっと懐かしくなるでしょう。
それだけでもこの本を読む価値があるというものです。

内容自体は途中まではとても面白かったわけで、
これは優秀賞を受賞するのも分かるなという出来です。
その一方で、日本ファンタジーノベル大賞は、
最近はちょっと読んでいないので事情は分かりませんが、
初期の頃は本当に高い水準でなければ大賞なしも普通にありえました。
『青猫の街』は途中まではとても面白いのだけれど、
終わり方がやや唐突だったわけで、
これが大賞を受賞できないのも納得してしまったものです。

著者は涼元悠一さん。
後にkeyに入り『AIR』のSUMMER編を手がけ、
『CLANNAD』ではことみパートを担当。
また『planetarian』のライターでもあります。
現在はkeyをやめてアクアプラスにいるようですね。

『AIR』のSUMMER編をプレイした時には、
次の涼元さんの作品に非常に期待したものです。
しかし、『CLANNAD』ではガッカリしてしまいました。

いや、ことみシナリオそのものには特に不満はないのです。
いかにもkeyのシナリオらしいシナリオでしたからね。

でもね、このシナリオはkeyのカラーであって、
涼元さんでなくても書けるのですよ。
涼元さんに期待したのは、如何にもkeyですってシナリオではなく、
既存のアダルトゲーム市場にはない涼元さんのカラーが見たかったのです。
その希望が果たせなかったわけですから、
ことみシナリオの出来云々関係なしにガッカリしてしまったのです。

アダルトゲームというフィールドで『青猫の街』をやって欲しかった。
端的に言えばそういうことなんですよね。
『青猫の街』は小説にしては珍しく、横書きになっています。
作品の内容に合わせ縦書きも横書きに変えてしまう。
ファンタジーノベル大賞の歴代受賞作には、
『鉄塔 武蔵野線』のように表現方法からして特異な作品もあります。
『青猫の街』もそれに類する作品。
こういう既存の枠に当てはまらない新しい風を、
アダルトゲームの世界に取り入れて欲しかったのです。
しかし現実には涼元さん方がアダルトゲーム色に染まってしまい、
私の勝手な願望も幻と消えてしまいました。
この本を手に取る度、いつもそのことを思い出してしまうんですよね。

青猫の街

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