アダルトゲームの歴史 1996年 その1

アダルトゲームの歴史 1996年 その1

アダルトゲームの歴史を振り返るシリーズの第34弾ということで、
1996年の1回目になります。

今回は主にグラフィック面の話になりますが、
それとの関係でちょっと番外編的に、
2次元でないアダルトゲームの世界についても見ていきたいと思います。

95年末にwindows95が発売されてCD-ROMが一気に普及しだすのですが、それはPC-98を中心に据えた場合の視点にすぎません。MACやTOWNSではそれよりずっと前からCD-ROMが当り前でしたから。
具体的な時期は覚えていませんが、93年にはWIN3.1も発売されますし、この頃にはマルチメディアという言葉の使われる頻度が高まりつつあり、映像と音楽を用いた新しい表現方法を模索して各方面で動きが生じたのです。
そしてその中の1つに、アダルトビデオ業界がありました。

そもそも実写を用いたアダルトゲームは80年代からあり、80年代中頃は写真集+ミニゲームみたいなのも多かったのですが、中にはナンパゲームとして成立していたものもありました。もっとも、2次元の美少女が実写になっただけとも言えたんですね。
その後PC-98時代になると、実写モノは人気がなかったからかオリジナル作品はほとんど作られなくなりました。この頃のPC-98の実写ゲームというと、『あゆみちゃん物語』の実写版のように、二次元用に作られたゲームを実写で作り直すというリメイク作品が主だったのです。アダルトゲーマーの多くはPC-98だけということが多かったですから、この当時の一般的な認識は人気作を実写でリメイクしたものばかりという印象だったのではないでしょうか。

でも上記のように他機種ではCD-ROMがいち早く普及し、独自の展開もなされていたのです。とは言うものの、アダルトCD-ROMの出始めの頃は、AVの場面を再編集したものをつなぎ合わせたようなものが多く、そして全体を通しても大半はそういうソフトが多いです。そんなもの誰が買うんだと思う人もいるかもしれませんが、今と異なりTVが家にそう何台もある時代でもなかったですし、家族持ちだと自由にTVを使えないことから、おっさんがPCでひっそりと見るという需要があったわけですね。
ここまでならあえて扱う必要もないのですが、KUKIというAVメーカーはマルチメディアとして映像と音を融合させた新たな方向性を開拓していったのです。
例えば93年には『ZAPPINK』を発売。これはザッピングとピンクをかけたのでしょう。Hシーンでザッピングさせるという、一般のゲーム業界でもまだ珍しい手法をアダルトな世界において実現しています。
その後も『サドラ・マゾラ』に『アマゾネス』(1995)にと、全編CG+実写に選択肢で分岐というインタラクティブムービーのアダルト版という分野を開拓していきます。『ヴァーチャル未亡人下宿』(1995)では仮想空間を作り上げ、二次元のアダルトゲームとは異なる発展をしていったわけですね。内容的にも主人公がアパートの管理人で、住人たちがもたらすトラブルに右往左往させられるというもので、AVというよりは日活ロマンポルノのようなノリで、これまた二次元のアダルトゲームとは異なる雰囲気でした。
他にも特殊な視点で切り込んだメーカーもありますし、これらは仮にPC-98で発売されても二次元にしか興味のない人には相手をされないのでしょうが、独自の文化圏というものは確かに存在したのです。
一般ゲームを見渡すと『ナイトトラップ』や『悪逆の季節』が出たのもこの頃ですし、一般アダルト問わず、およそ実写ゲームにおいて最もオリジナリティやクリエイティビティが発揮されたのが、93年から95年ということなのでしょう。
ただ残念な事に、実写アダルトゲーに対し斬新なアイデアやクリエイティビティを求めるユーザーや需要があまりなかったようで、その後はエロムービーどっさりのお手軽路線の方が好まれて、次第にアイデアやゲーム性に富んだ作品は衰退していくことになるのです。

windows95の時代になると、ゼロ年代に入るまではスパイクソフトが孤軍奮闘していた印象があります。代表作は『召使い』シリーズで、大量のムービーに簡単な調教SLGの要素がついたものでした。
これまでのKUKIのゲームとかと比べるとクリエイティビティは低いのですが、質より量ってことですね。この量という側面も90年代後半になる頃には目立たなくなるのですが、96年頃だと『召使い4』でアダルト業界初のCD3枚組だったりで、圧倒されたものです。何せ同じCD3枚組の大ボリュームで世間を驚かせた『FF7』が97年ですから、それより早いわけですしね。二次元のアダルトゲームはまだフロッピーの世界ですし、PSやSSの次世代機もまだゲームのほとんどはCD1枚の世界でした。それだけに、枚数という見た目のハッタリにすぎないとはしても、そのハッタリもまだ効果的だったのです。因みに、シリーズでも濃厚な3Pがあるのは『召使い4』だけですし、3からゲーム性もアップということで、個人的には4の存在は大きかったのかなと思います。

質と量という方向性の違いはありますが、アダルトの国産実写ゲームが目立ちえたのは大体96年頃までだったのかなと思い、今回ここで扱いました(実はもう1つ別の方向性から実写のアプローチがあるのですが、それは97年のところで扱います。)。
それ以後は、例えばDVDの登場によるDVDPGでPCを用いない路線であるとか、インターネットの普及でアダルトサイト探しという方向に実写系は分散してしまいましたので、実写のPC用アダルトゲームというのは現実的には厳しくなっているようですね。
期間としては非常に短いものでしたが、小ボリュームでもクリエイティビティの高いものから、単純でも大ボリュームの豪華主義的方向になり、最後は安価な他メディアに分散と、二次元のアダルトゲームがその後歩んでいく軌跡を一気に短期間でたどったようなものなのかもしれません。

さて、ここから二次元の世界へと戻ります。95年末にwindows95が発売されたと言っても、すぐにはメーカーもユーザーの環境の方も整備できません。だから97年までは普通にPC-98のゲームも発売されていた(最後の98用のゲームは98年になります)のですが、大手と呼ばれるところやグラフィックに力を入れているところは早めの97年に入る頃にはwindows95に移行しますので、PC-98におけるグラフィックの進化という観点からは96年が最後となるわけです。
96年にもなってパッケージに「豪華16色!!」という表現を用いてきた『ビ・ヨンド』には笑わせてもらいましたが、その表現は決して伊達ではありませんでした。背景を含めた細かなアニメーションを随所に取り入れることはエルフの得意とするところでしたが、その集大成的な動きと言えるでしょう。
部分アニメーションとか動きと言っても細かくみるといろいろあるのであり、上記のようにエルフは背景や立ち絵が細かく動くという路線が多かったです。これに対して例えばカクテルソフトの『晴れのち胸さわぎ』(1995)ではフェイスウインドウを用いたりカットインを画面中で細かく動かすことでテキストにあるドタバタぶりを表現していましたし、また目パチ口パクなんかは多くのブランドが採用していたように思います。
今でも絵は良いのにストーリーが駄目なブランドは多数ありますが、当時もストーリーやゲーム部分が駄目でマイナーに終わってしまっても、動きの面では妙なところにやけにこだわったりするブランドもわりとありました。つまり作品の内容との関連性や程度の差はあれ、動きを伴わせるゲームは結構多かったんですね。そういう文化が見られるのも、96年辺りまでなのでしょう。
もっとも、今はまた立ち絵の動きをつけたりカットインを入れたりして、動きを伴うゲームが増え始めています。問題はwindows95以降の90年代後半からゼロ年代前半なのです。この時期はwindows95の登場により使いこなせるだけの技術力の伴わない中小ブランドは複雑な構造のものを作れなくなったという外的要因もありますが、それ以上に好きなストーリーやキャラとイベント時の綺麗な一枚絵されあれば十分というユーザーの内的な変化も組み合わさる事で、ゲーム内における絵の動きが最も軽視された時期だったのです。そういう意味では、『ビ・ヨンド』は96年らしいゲームの1つではあったのでしょう。
グラフィック的な進化というのは動きだけでなく塗りの方でもあるわけで、この塗りという方面でも業界トップクラスにあったのがエルフでした。そのエルフの最後の98用ゲームが『YU-NO』だったわけで、PC-98時代の最高の16色という観点からは必ずノミネートされるであろうゲームでした。
もっとも『YU-NO』の場合は通常の98的な塗り方という、オーディションで言えばクラシック部門みたいなところでの代表作と言えるわけで、PC-98らしくはないけれど別格の綺麗さという意味では『スタープラチナ』がその筆頭に挙げられるのでしょう。

ここまでPC-98の話を進めてきましたし、実際に新規のゲームも多くがPC-98用だったのですが、windows95は既に発売されていますし次第にWIN用のゲームも発売されていきます。と言っても、最初は旧作の移植が大半でした。このPC-98からwindows95への移植における変化は、16色から256色になり音声がついたことにあります。これだけでも98からの変化としたら大きなものなのですし、『禁断の血族』のWIN版がヒットしたことからも、衝撃を受けた人が多かったのでしょう。
しかしその一方で、色数が増えて音声がついた移植版というのは、何年も前からTOWNS等で実現しているとも言えるわけでして。なので、この辺の受けとり方は各自の環境次第でも変わってきたように思います。

WIN用で新規タイトル、絵の描き方から変わりつつ256色になり音声もついてアニメーションもついた大作となると、『虜』辺りからになるのでしょう。D.O.はWIN版によるリメイク展開に積極的で、256色化に音声のついたリメイク版を順次発売していくことになります。リメイク版では表でも活躍する有名声優が使われていて質も高かったですしね。
もっともD.O.の場合はwindows95により新たに始めたのではなく、98時代から既にTOWNSに音声付の移植をなしていましたから、WIN版もその延長ということなのでしょう。既に経験が豊富にあったから、『虜』の時点でも高品質な音声が実現できたのです。
尚、主流は恋愛ゲームの時代になっていますし、『虜』はきつい調教SLGですので、どうしてもプレイ層が限られてしまいます。恋愛ゲームで幅広い層がWIN用による絵の進化を感じ取ったゲームとなると『同窓会』辺りからとなるように思います。

ところで、『同窓会』には音声がありませんし、その後の大作も音声がないものが続きます。
D.O.の場合は触手や調教というマニアックさがある故に参考にしにくい部分もあるのですが、WIN95の登場に伴いもう音声は当り前になると言われつつもその後も中々標準化しなかったのは、恋愛ゲームや萌えゲーのユーザーの側であまり音声の有無が重視されなかったということでもあるのでしょうね。最近では音声がなければ論外と考えるユーザーが多いですから、その辺りにも当時のユーザー層と今のユーザー層との違いが見て取れます。
それと詳しくは次回以降に扱いますが、アイデスの一枚絵重視路線もこの頃から始まったと言えるように思います。

他方で、いつの時代もグラフィック水準が上昇するとCG集の類が増えていきます。96年もCG集の類が増えた年でしたが、その代表的な作品として『全国制服美少女グランプリ』がありました。
この『全国制服美少女グランプリ』には二次元の女子高生のヘアヌードイラストが収録されていて、人気コンテストなども実施されていました。
ヘアヌードが解禁された辺りが、何ともこの時代を象徴しているようにも思います。
また人気コンテストというのも象徴的で、ゼロ年代に入った頃にはユーザーとブランドが一緒になって盛り上げる気運が高まりましたが、そういう方向性の先駆けみたいなものだったのでしょうね。

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