ミステリート ~アザーサイド オブ チャーチ~

ミステリート ~アザーサイド オブ チャーチ~

『ミステリート ~アザーサイド オブ チャーチ~』は、
2009年にWIN用として、AbelSoftwareから発売されました。

まず全体像から入りますと、
本作は2004年に発売された『ミステリート』と同一時間軸上にある物語で、
同じ場所で起こった別の事件という位置付けになります。

m_osc01.jpg

<概要>


ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

前作『ミステリート ~不可逆世界の探偵紳士~』の
第弐話「神の業火が降り注ぐ!?人間焼失殺人事件」と
‘同じ時刻’の‘隣の場所’が舞台となっており、
前作とは別の、‘もうひとつの真実’が解き明かされていく。

<ストーリー>


正式な続編である2は今後発売される予定でもあり、
『ミステリート』との関係では、
本作(以下OSC)は外伝的な位置にあります。
もっとも個々の事件という観点からは独立しているのですが、
大きな流れとしては『不可逆世界の探偵紳士』、『ミステリート』、
そしてこのOSCと全部つながっています。
先の作品をやっていないと全体像も掴めませんし、
キャラに対する感慨も全然異なってきますので、
必ず前の2作品を先にプレイすることをオススメします。

さて、OSCは探偵紳士の流れを汲む作品ですので、
基本的にはミステリー物となります。
そして率直な感想としましては、面白かったな~
ミステリー系のゲームで心底楽しかったの一体いつ以来だろうな~
ってところでしょうか。
しばらく推理物で楽しめた作品がなかったですし、
前作にしてもミステリー物というよりキャラで楽しんだ印象が強いので、
そうなると2003年の『ミッシングパーツ3』まで遡るのでしょうか。

そもそも私は、菅野さんのゲームの多くは好きではあるものの、
あまりミステリー分野では評価していなかったので、
ミステリーからは早く手を引けよって、ずっと思っていました。
それなのにOSCは素直に楽しめたわけですから、
少なくともミステリーの書き方に関しては、
前より上手くなってきているのかなと思いましたね。

まぁ、ここは私の好みと合致したという面もありますけどね。
ミステリーの楽しみ方にもいろいろあるわけで、
どこを重視するかも人それぞれなのだと思います。
1つの典型例がトリック重視の見方なのでしょうが、
トリックさえ優れていれば他がカスでも良いのかというと、
私にはそうは思えないわけでして。
それでもそのトリックが秀逸であれば話は別なのですが、
近年はゲームでもトリック重視のゲームも増えてはいるものの、
所詮は推理小説のネタの何番煎じでしかないのであり、
それで楽しめないのも多いわけですね。

昔から私は推理小説やドラマが好きだったのですが、
事件というファクターを通しつつも、
その背後の人間関係とかを見るのが好きだったのだと思います。
そして、それはゲームでも同じなのです。
昔は堀井作品やリバーヒルの作品など好きな推理物も多かったのですが、
これらだって特別なトリックとかはないんですよね。
それでも好きだったのは、非常に多くのキャラが登場し、
そのキャラたちの複雑に交差する人間関係や物語が、
とにかく好きだったからなのです。

OSCもまた、別に派手なトリックが用意されているわけではありません。
だからそういうものを求める人には合わないでしょう。
しかしOSCには多数のキャラが登場しつつ、
それらの関係や思惑が幾重にも重なり交錯していくのです。
ある意味で80年代の大好きだった推理物のような、
妙な懐かしさを感じましたし、
それが菅野さんのテキストで進行するわけですから、
私に合う条件は出揃っていたのでしょう。

そういうわけで、この作品は重なり合う人間関係を楽しむものであり、
その類の作品が好きな人ならば楽しめるように思います。
反面、派手なトリックありきの人には、
あまり向かないのかもしれませんね。

それと、完全にリアル路線でなければ駄目って人は、
一応注意が必要かと思います。
というのも、OSCの主人公は内部の人格が変わるのですが、
単純な多重人格ではなく、
鳥の形などによって単独で外部に出ることも出来るのです。
いわばちょっとしたファンタジー設定なので、
もしかしたら抵抗のある人もいるかもしれませんから。

ただ、ここは余程神経質な人以外は大丈夫だと思います。
確かにリアル路線で進みつつも最後でファンタジーってのは、
何でもありっぽくて萎えてしまうでしょう。
しかしOSCはそのファンタジー設定を最初に見せつつ、
以後はその設定を前提とした上で物語が進行しますので、
最後でポカーンとなることはありませんからね。

2に続くということで黒幕絡みの全体としては未完なのですが、
OSCとしてのエピソードは完結していますし、
総じてストーリーは大きな長所と言って良いかと思います。

<グラフィック・サウンド>


問題があるとすれば、むしろ他の部分なのでしょう。
まず演出面なのですが、原画は緒方剛志(ぼうのうと)さんです。
決して悪くはないのですが、特にプラスにもならないのかなと。

ただ、私はその程度の印象で済みましたが、
シリーズの各作品は皆原画が異なりますし、
特にOSCは毛色がかなり異なって見えます。
なのでシリーズ全体の統一感という観点から、
そこら辺が気になる人はどうしても出てくるかと思いますね。

次にサウンドなのですが、この時代にしては珍しく音声がありません。
サウンド自体は合っていたし、
ゲームをプレイしていると音声の有無は気にならなくなるのですが、
若干の寂しさは否定できないでしょうし、
気になる人も出てくるのかもしれませんね。

<ゲームデザイン>


ここら辺はマイナスに感じる人もいるかもしれないけれど、
まぁ普通の人は大丈夫だろうってレベルでしょうか。
むしろもっと問題なのはゲームシステムで、
これは端的に言えば非常にだるいものでした。
「面倒臭い」の一言で事足りる気もしますが、
それではあまりに酷いので、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

具体的には、OSCは画面全体に文章が描かれるタイプのADVで、
見た目的には昔よくあったタイプのノベルゲームになるのでしょう。
読み進めるという構造からノベル系のADVとなるのでしょうが、
選択肢による分岐はごく一部に限られほとんどありません。
他方でテキストの一部にリンクが貼ってあり、
そこをクリックするとTIPS的な説明が読めたり、
或いは他者の視点に飛ぶことができ、それにより物語が分岐するのです。

osc20.jpg

アダルトゲームとしては『最果てのイマ』が近いでしょうし、
一般物の古いので言えば『街』に近いのでしょう。
ただ、任意に視点変更できるというわけではありませんので、
ザッピングではなくマルチサイトの範疇に収まるゲームかと思います。
まぁ、要するにMACのハイパーリンクを用いた手法なわけで、
もっと古くは『マンホール』や『MYST』のようなものですね。
『マンホール』とかは全て画像で進行していたのですが、
それをより原始的なテキストの形でやったということなのでしょう。

菅野さんはADVとしてのゲーム作りにこだわる方であり、
昔はADV作りの上手さに定評がありました。
それで私も好きな作品が多かったのですが、
例えば一流の打者にも打率は良いけど長打はないみたいに、
全てが完全とは言えない場合もあるわけで、
菅野さんにもそれが当てはまるのでしょう。

まず菅野さんが一番得意とするのは、
そのストーリーにどのシステムが適しているのか、
どういうシステムを導入すべきかという、
総合的なゲームデザイン部分なのだと思います。
OSCは多くのキャラが登場し、物語が幾重にも重なり合います。
1人の視点ではなく多数の視点で物語を見せる、
別人の視点に飛び、ある者の行為が他者の行為に影響を及ぼす。
それを効果的に見せるためにハイパーリンクを用いたのは、
ゲームとしては相応しかったのでしょう。
また多くの人物が登場しますので、
ノベル部分の脇に顔を表示させるのも効果的でした。
まぁ、ADMSを作った菅野さんですからね。
複数の視点での進行とそれが他の相手にも影響を及ぼすという点では、
簡易的なADMSっぽくもあるわけで、
菅野さんらしい作品と言えるかとも思いますが、
大枠では内容にマッチしたシステムだったとは思います。

さて、導入するシステムが決まれば、
今度はその個別のシステムの出来が問題となります。
ADVの古くからの指標としては4つのものがあります。
1つ目は、ホットポイント(介入できる場所)の多さです。
単に見ているだけより自分が介入できる場面が多い方が、
当然ゲーム性は高くなるってわけですね。
これは量の問題でもあるので、労力をかければ誰でも良い物が作れます。
OSCは普通のノベルゲームよりは多いものの、
一般のP&C式とかよりは少ないってところでしょうか。
ノベルゲームは構造的にここを増やすのは適していないですし、
また他者の視点に飛ぶという要素が加わりますので、
あまり数が増えてもかえって混乱するでしょう。
その辺も考慮すると、このくらいで問題はなかったかと思います。

2つ目は、ホットポイントでの反応の多彩さですね。
クリックすると反応が返ってくる。
その反応がクリックする度に変われば、クリックする楽しみも増します。
ここは本来的なADVでは最も重要な要素でもあったわけで、
昔の菅野さんは特にこの部分が非常に上手かったわけですね。
いわば一番の特徴とも言える部分なのですが、
OSCのようなノベル系では、
構造的にほとんど重要性のない箇所でもあります。
私は菅野さんは本質的にノベルに向いていないと思うのですが、
その最大の理由は、ノベルでは持ち味が活かせないと思うからなのです。
重要な要素でもないので別にマイナスになるわけでもないのですが、
打席に立たせてもらえない強打者と一緒で、
ノベルシステムでは一番の持ち味が出せず稼げるところで稼げないので、
その意味で勿体無いようにも思いました。

3つ目は、ホットポイントでやれることの多さですね。
OSCはリンクをクリックして他者の視点に飛べるわけで、
それがゲーム進行の基本となります。
しかしそれ以外にも、暗号を解読したり、
推理してその結果をコマンドで入力させたりと、
アダルトゲームとしてはやれる要素が多いです。
ここはね、どこに基準を置くかでも印象が変わってくるんですよね。
近年のノベルゲームはただ読むだけのがほとんどなので、
久しぶりに頭を使うゲームに会えたし楽しかったと考えれば、
十分にプラスにもなりうるでしょう。
でも、それこそ海外のP&C式やMYST系と比べると、
謎の難易度も量も種類の多彩さなどもまだまだなわけでして。
並のノベル系より遊べる以上マイナスには決してなりえないのですが、
かといって長所とも言い切れないように思うのです。

とはいえ、ここまではプラスにこそなれ、
マイナスにはならない部分と言えるでしょう。
問題があるのは、4つ目ですね。
それは、ホットポイントの分かりやすさです。
一見すると地味なようですが、
意外とここで評判がガラリと変わるゲームも多いです。
例えば海外のADVはP&C式が主流なわけですが、
つまりは画面クリック式なわけですね。
そうすると中には、クリックすべき場所が判りづらい、
判っていてもピンポイントでクリックしなければならないものもあり、
そうしたゲームは画面中にマウスを這わせなければならず、
あちらでもPixel Huntingとして忌み嫌われます。
もっとも、クリックできる箇所が事前に全部判るというのでは、
実質的にコマンド選択式と変わらないですし、
探し出す楽しさみたいなのも激減してしまいます。
もちろんP&C式にも絶賛される物は数多くあるわけで、
つまりはそこをどう調整するのかが腕の見せ所なのであり、
センスや経験が要求されるところでもあるのです。

そしてね、私は菅野さんのネックはここなんだと昔から思っています。
この部分は、出来ることを全て見せる事が前提のコマンド選択式では、
重要性がほとんどありませんでした。
だからシーズでのコマンド選択式時代は目立たなかったのでしょうし、
エルフ時代はエルフという会社自体が国内のP&C式の最大手でしたから、
そこでも全く問題がなかったわけです。
純粋なコマンド選択式から離れ、エルフからも独立することで、
その時点でようやく露出してきた欠点なのだと思います。
以後の作品が迷走しているように思う人は、
おそらくここで引っかかっているのではないでしょうか。

具体的にOSCで見てみますと、
ハイパーリンクがどこにあるのかが一見して判りません。
しかも文章単位ではなく、中には1文字単位のリンクすらあります。
これを漏らさずやるには本文全てをマウスでトレースする必要があり、
まさにPixel Huntingと同じことが要求されているのです。

本文全てをマウスで追いかけることがどれだけ大変であるか。
例えば、この私の文章を全部マウスで追うだけでも結構面倒でしょう。
それをゲームで、10時間以上もやれというのはちょっときついですよね。
右手を酷使する、ある意味最も忌み嫌われることをやったわけですから、
これには首を傾げざるを得ません。
海外でもこういう形態で難易度を上げても全く評価されないわけで、
昔からADVで提起されてきた問題点なだけに、ちょっと残念でした。

もっともこの部分に関しては、後にパッチが配布されています。
それによりリンクがピンクで表示されるようになりましたので、
今なら全文トレースという苦行をする必要は全くありません。
開発段階ではフォントを変える予定だったみたいなので、
元に近い案に戻したってことなのでしょうね。

なので大きなマイナスにもならないのですが、
かと言って今度は全部リンクが表示されるわけですから、
探し出すような面白みはなくなっています。
そのためパッチ前提なら、
大きなマイナスにはならないにしてもプラスにもならないのです。

ここら辺のバランスはセンスや経験が必要なわけで、
何とも難しいところでもありますね。
まぁ、自分ならばってことで戯言でもあるのですが、
リンクがピンクで表示されてもページの最後にあると、
うっかり押しすぎてリンクを通り過ぎることが多々ありました。
ここはバックログでもクリックできるようにすれば、
そうした不便は感じなかったのかなと。
それと、ADMSの時のようにマップで全体像を表示し、
分岐ポイントをそこで示してもらえれば、
ここら辺でリンクポイントがあるなと事前に予想出来るでしょう。
そうすればリンクに色がなくても怪しいページだけ注意すれば良く、
全文トレースをする必要はないですし、
それでいて探し出す楽しみも維持できていたでしょう。
この部分は菅野さんの今後の課題でもあるのでしょうが、
本来的なセンスの有無はともかく、
自身の過去作によって既に経験は積んでるはずです。
だから幾らでも良い物を作れる可能性はあると思うんですけどね。

<感想・総合>


総合的には、パッチを前提とすればシステムのマイナスはあまりなく、
音声なしも特にOSCでは気にならなかったので、
ストーリーのプラス分の方が勝る感じでしょうね。
それでも最初は良作程度かとも思ったのですが、
同じ年や前年でこのレベルでストーリーに満足できたものも、
他にはなかったわけでして。
それで相対的に浮いてきたという面もあり、
ギリギリですが名作扱いで良いのかなと。

本作は発売当初は認証が必要だったり、
ゲームの途中でパッケのパスワードを入力させたりと、
プレイするのが面倒臭い状況にあったんですよね。
それで躊躇した方もおられたかと思いますが、
今は認証も不要になりましたし、DL版も出ていますので、
今こそプレイすべき時期なのかもしれませんね。

最後になりますが、シリーズのファンはぜひプレイしてみてください。
ストーリーに関しては間違いなく、
不確定世界の探偵紳士やミステリートに勝るとも劣らないですから。
逆にシリーズ未経験の人は、興味があるなら古いのからやってください。
そこで縁があれば、自ずとOSCにまで辿りつくでしょうから。

ランク:A-(名作)

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