素晴らしき日々 ~不連続存在~

素晴らしき日々 ~不連続存在~

『素晴らしき日々~不連続存在~』は2010年にWIN用として、
ケロQから発売されました。

電波ゲームとして有名だった『終ノ空』のリライト的作品ですね。
続編とかではないので、
『終ノ空』自体はプレイしていなくても何ら支障はありません。

素晴らしき日々 ~不連続存在~ 特装初回版

電波ゲームで私が真っ先に思い浮かべるのは『ODEON』なのですが、
あれは全くなにがなにやら意味不明な作品でした。
一言で電波といってもいろんな方向性があるわけで、
電波に哲学的な要素を取り入れた『終ノ空』は、
その点で他の電波ゲーとは違う特徴・個性を有していましたし、
少なくとも『ODEON』なんかよりはまっとうな内容でした。
なので個人的には好きな方向の作品だったはずですが、
それでもあまりに説明不足でね、
未完成な不完全なイメージを抱いたものです。

あれから10年以上が経ちました。
本作では『終ノ空』にあった不完全さが、かなりなくなっています。
よく作りましたね。
お前は10年前に追いかけていたものを成し遂げたのかと聞かれると、
決してそうではないわけでして。
作品の内容以前に、
まずはライターの心意気を評価したいなと思いました。

さて、ここからが内容面ですが、まずは主観的要素に絡んだ面について、
というか専らストーリー面についてです。
本作のような作品の場合、どう感じたかだけではなく、
どういう人がどう感じたかが大事になってくるかと思います。

本作は序盤は電波ゲーのようでいて、終盤は解決に入っています。
その分、電波分は弱くなっているんですね。
『終ノ空』ファンにしても、哲学的要素が好きな人もいれば、
電波的要素が好きな人もいるでしょう。
もちろん、熱烈なファンはその融合した姿が好きなんでしょうけど。
生粋の電波ゲー好きってかなり少数な気もしますが、
そういう人には『終ノ空』ほどのインパクトはないように思えますね。
とりあえず電波だけを求める人は、過度に期待しない方が良いでしょう。

また1章は体験版でも出来るのですが、百合っぽく感じます。
百合好きとしては期待したくもなりますが、
本作は主人公も代わって行きますし、2章以降の百合分はほとんどないです。
百合目的で購入しようって言う人は、正直やめた方が良いでしょうね。
因みに私は百合作品は大好きですが、この1章はかなりつまらなかったです。
淡々としていて、まるで楽しめませんでした。
百合好きですらそうなので、好きでない人はもっと辛いかもしれません。

以降の章では主人公が代わり、男が主人公になったりしますが、
これはもう電波というより厨二です。
こういうのは最近プレイしていなかったので忘れかけていましたが、
私は電波なキャラは好きなんですが、厨二病なキャラは苦手なんですよ。
ここはもう完全に好みの問題なのですが、
私みたいに厨二病なキャラは苦手って人は、
つまらないどころか不快感すら抱きかねません。
そういう人は要注意でしょうね。

それと、上の記述とも被りますが、電波はインパクト勝負だと思います。
しかし、本作はそれが弱いのです。
作品の性格上仕方ない面もありますが、
電波にしろ百合にしろ厨二にしろイジメ描写にしろ哲学的要素にしろ、
以前にどこかで見たものの集合体な印象が強いです。
あまり新鮮味がないんですね。
それでも何だかんだで萌えや燃えのように盛り上がれる要素は、
繰り返されてもそれなりにお約束的感覚で楽しめるものですが、
そうでない要素はあまり楽しめないんですよね。
エロゲー暦の浅い人は気にならないかもしれませんが、
10年選手は案外この部分がネックになってくるかもしれません。

終盤は物語の解決になっていくわけですが、
ここでは電波色も薄れてテキストも読みやすく楽しくなっていきます。
それこそ、今までの苦痛は何だったんだって感じで。
それに加えて、伏線の張り具合や回収など、
そうした方面が非常に上手かったと思います。
伏線の多いゲームが大好きって人も結構いるかと思いますが、
そういう人は買いでしょうね。
ただ、注意すべきは「伏線が多い=素晴らしい作品」ではないことです。
上手いライターは大して伏線がなくても、
1場面や或いは1フレーズでも読者を惹き付けるものです。
私も伏線好きな方ですが、伏線は決して物語の本筋ではありません。
普通に読んでいても面白いけど、
その何気ない描写に更に意味があるから深みも増してくるってものです。
まずは基本ラインが面白いかの方が大事なのであって、
つまらない展開が続きつつ伏線ばかり一杯ありますって言われても、
それは単なる小手先での誤魔化しにしか思えないんですよね。
あれも伏線これも伏線って言われても、
私のように中盤まで楽しめなかった人間には、
あぁ~そうなん、ふぅ~んって感じではまれないのです。
本作は伏線は確かに凄かったのですが、
無駄な部分も非常に多く全体の構成自体は下手だと思います。
序盤から中盤を大胆に削りつつもっとコンパクトにまとめていれば、
印象も大分変わっていたかもしれません。

そして、ある意味一番の特徴でもある哲学的要素ですが、
少なくとも『終ノ空』よりは分かりやすくなっています。
まぁ、このために本作を作ったようなものでしょうから、
そういう意味では本作を作ったことには意義があったと言えるでしょうね。
ただ、分かりやすいというのはあくまでも比較の話でしかありません。
ん~、ここもかなりその人次第な面が大きいんですけどね。
何かよう分からん要素が提示された、
それについて自分であれこれ考えるのが何より好きって人は、
本作は間違いなく買いでしょう。
最近はこういう類の作品も減ってきただけに、
久しぶりに大きなネタの提供って感じですしね。

ただ、私は歴史小説を読むくらいなら資料にあたる、
哲学に興味があるなら直接哲学書にあたる人間なんですね。
それでも名前を聞いただけでは中身が分からないマイナーな学問とかは、
内容も知らないし興味もありません。
だから分かりやすく説明してくれて興味も持たせてくれるゲームは、
自分の視野を広げるきっかけを作ってくれるわけですから、
かなり好きだったりします。
内容では専門に負けるのは当然ですが、
興味を持たせるとか分かりやすくって点では、
小説やゲームの方が優れていますからね。
私がSF小説を好きなのもそういうところに理由がありますし。

でも、哲学なんて高校でも扱うし、
専門書の内容をやさしく解説してくれる本も一杯あります。
本作でも分かりやすく説明がなされていれば良かったのですが、
やっぱりいろいろと不十分な面もあったかと思います。
ライターは専門書を書いているわけではないのだから、
もう少し誰でも全部分かるように配慮すべきではあったでしょうね。
試験の論文とかでも、高く評価されるのは分かりやすい文章です。
頼まれて評価の伸びない人の論文を読むこともあるのですが、
大抵は内容は良くても無駄に小難しく書いているのですよ。
「一読了解」、難しそうな題材ほどこの言葉が大事なんだと思いますね。

ストーリーに関してはこんなところでしょうか。
いや、もう1つ、少々鬱な要素があることも指摘しておくべきでしょうね。
鬱ゲーに慣れていない人は若干キツイ場面もあるかもしれません。
まぁ、そんなに濃くはないので、
慣れてる人にはどうってことはないでしょうけど。
因みに、私は濃ければ濃いほど良いってタイプなので、
ここはプラスにもマイナスにも評価していません。

端的に言えば、かなり人を選ぶと思います。
自分でとにかく考察したい、
伏線が3度の飯より好きって人は購入してまず間違いはないでしょう。
それだけを求めるならば、
求めただけのものは十分に提供されていると思いますし。
しかし、逆にそうでない人は要注意なのではないでしょうか。
人によってはマイナスに感じる要素も結構ある作品なので、
よく吟味する必要がある気がしますね。

次にストーリー以外の点についてですが、
まずは主観面にかかわるものの続きでキャラについてです。
本作のキャラの中には、
アニメに出てくるキャラとそっくりなキャラがいます。
(まぁ、ぶっちゃけかがみんとつかさですね。)
名前まで一緒となると、
キャラ作りを放棄したようで評価は出来ないですね。
他にもテキスト全般が淡々として薄いこともあって、
あまり魅力的なキャラはいませんでした。

次にグラフィックやサウンド面ですが、
サウンドは普通だったのかなと。
一部の歌は好きだったのですが、
全体では可もなく不可もなく悪くもないけど印象にも残らないって感じで。

それより期待していたのはグラフィックでした。
サンプル画像を見たときは、
キャラも可愛かったし空が鮮やかで綺麗でしたからね。
『終ノ空』はここら辺がショボかっただけに、
余計にも期待したくなったものです。
ただ、これも及第点ではあったけど、それ程でもないような…
目パチ口パクはないし、立ち絵の動きも乏しいですしね。
1枚絵も空は綺麗でしたが、それだけなんですよね。
あまり惹かれるCGはなかったです。
少なくとも、近年のグラフィックが素晴らしいとされるゲームよりは、
物足りない感じでしたね。

システムは基本的には良いのですが、
何度もやり直してスキップの連続という構成でありながら、
それでいてEDを飛ばせないのが不満でしたね。

ゲームはストーリーだけでなく、様々な要素から成り立ちます。
仮にストーリーを最高に感じても、
本作はその他の部分は平均並であまり高得点にはならないかと思います。

問題はストーリーをどう捉えるかですが、
前編で書いたように良い面もあれば悪い面もあります。
端的に言えば、終盤は良いけど序盤が駄目なんですね。
終わりよければ全て良しって人も当然いるでしょうが、
私はつまらない時間が長ければその分はマイナスに考えます。
終盤の良さと序盤の悪さを相殺して、
結局は平均よりやや上って感じですかね。

ゲーム全体としては凡作~佳作って感じですが、
前編の冒頭で書いたようにライターの心意気を買いたいので、
その分を加点して良作に近い佳作にしておきます。

とにかく人を選ぶ作品です。
プレイし終わってもよくわからんって人も一杯います。
そういう作品なので、多少のネタバレは何の意味もないでしょう。
だから購入すべきかは、
情報を得てよく判断してからすべきタイプの作品でしょうね。

最後に、『終ノ空』は欠点も多かったけど、
「何だこれは!!」ってインパクトがありました。
名作ではなかったけれど、印象が強く記憶に残る作品でした。
ゲームに完成度を求めるならば、
一般PCゲーや家庭用ゲーム機のゲームをやります。
だからアダルトゲームにはあまりそういうのを求めません。
むしろ、一般物ではありえないような、
尖った何かを期待したいのです。
特に電波ゲーなんかでは、インパクトこそが大事になってくるでしょうし。
本作は欠点も減り、『終ノ空』よりも完成度は高くなっています。
でも、尖った強烈なインパクトは、
『終ノ空』を初めてプレイしたときほどではないんですよね。
どの要素も既に何かで見たようなものばかりで、
本作ならではという明確な特徴が欠けているんです。
なので、『終ノ空』は10年以上経っても覚えていましたが、
本作のタイトルは数年後覚えているか分かりません。

本作はアダルトゲーム暦の短い人や、
長くても『終ノ空』が大好きな人は楽しめるでしょうが、
『終ノ空』に特別な思い入れがなくゲーム暦の長い人は、
あまり楽しめないんじゃないかと思います。
できれば、本作の内容を99年の時点で見たかったものですね。
あの当時感じた「何だこれは!!」って感覚に、
本作並の完成度が最初から備わっていれば、
間違いなく名作と感じられていたでしょうから。

ランク:C(佳作)

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